第二部
2-1. ◆ 来場者のイメージ
2- 1- 1. 一部主催者の企図に日本展示会協会が呼応し、経産省が方向性を示した来場客のイメージ
この来場客のイメージを探るのには、平成26年3月、~ はじめて展示会に関わる人のための入門書 ~の副題のもと、経済産業省によってまとめられた『展示会産業概論』からが早い。
その「はじめに」で、
会場では、 出展企業とバイヤーとの間で真剣な商談が行われ、その迫力に圧倒されます。また、開催 地域に対して幅広い経済波及効果をもたらし、地域のイメージやブランド力向上に寄与す るとともに、MICE の一環として、出展や商談を契機とした国内外からの誘客促進にもつ ながるなど、経済活動にとって重要なものとなっています。」
序章 展示会の概要(1)展示会の仕組みの項には、
「展示会は、企業等が商品・製品を販売するために販売先(バイヤー)と商談を 行ったり、市場動向(ニーズ)等の情報収集・情報交換等を行う場です」、としながらも「 ・・・ 真剣に挑みます。特に商談の場では、 出展者と来場者の熱気あふれるやりとりが展開されます。」で結んでいる。
第1章 展示会とは1.展示会の定義(2)展示会に関する様々な要素の定義①「来場者」の定義 我が国における「来場者」の定義は、
「情報収集、商品の購入、出展者との契約を目的として展示会に参加する人」
2.展示会の位置づけ (1)商談につなげる場としての産業では
「展示会は単に商品を展示(陳列)する場ではなく、出展者が商談を通じて商品の販売につなげたり、正確な商品情報を伝える場です。」
3.展示会の種類(1)特定の来場者(主にビジネス関係者)を対象とするもので、
「原則としてビジネス関係者に限定し、展示された主要な商品やサービ ス等の情報提供をもとに売買交渉(商談)を行うことにより、出展者は販路の確保(顕在顧客)や新規開拓(潜在顧客)に努めます。・・・ これに該当するものとして、「見本市・トレードショー」や「商談会」などが挙げられます。」
第5章 出展企業側からみた展示会「第1章でも触れたとおり、展示会開催の最大の効用は、
商談を通した出展者の 販売増です。」
3.具体的な展示会出展作業(2)出展準備●取引条件の設定の項では、
「展示会には商談のできる人がアテンドすることが前提です。」
4.展示会対応(2)商談スペースの確保では、
「会場内に商談スペースが設けられる場合が多いので、商談スペースを早め に確保することが重要です。」
5.展示会終了後(2)来場者(バイヤー)へのフォローアップで、
「継続してバイヤーへフォローしていくこ とが大事」
と、展示会は、出展者との契約を目的として来場したお客を暗示的にイメージしている。
経済産業省がまとめた『展示会産業概論』のようであるが、インターネットに上がってPDF化された資料は、検索結果、日本展示会協会のようであるから、ここに紐付いてであろうことから、日展協の思惑が働いてのことと読み取れる。
このように随所にちりばめた、メイン来場者は「商談目的」のお客である。
「商談」を定義づけることなく、暗に、「契約や購買目的の商談中心の展示会」にやって来る「契約や購買目的の商談客」を展示会や見本市のメインターゲット顧客としているかのようである。
この顧客の来場を推奨しているのは、結果を出す企業に出展してほしいからであろう。
主催者は、この趣意踏襲の出展者の誘致に精力を注いでいる。経産省も日本展示会の狙いはここにあるようである。
ところが、そう呼びかけても、ほとんどの来場者は、情報収集目的でやって来ているのが実情である。経産省も日本展示会も「既存の顧客だけでなく潜在的な顧客の声も聞くなど、コミュニケーションを円滑にして、これら来場客の声をマーケティングに反映する」と、『展示会産業概論(P.139)』に、この程度しか記載がない意味で、彼らの描く望ましい来場客と実情に大きな乖離が生じている
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