第五部  展示会と顧客  構成

 

5- 1. ◆ 待機・出迎えの機能

5- 1- 1.  チマチマし過ぎた待機の仕方では、成果は他社に持って行かれる

5- 1- 2.  名刺情報程度では間の抜けたアプローチにしかならない

5- 1- 3. ブース展開を見れば「企業力や社長の顔が見て取れる」

 

5- 2. 展示会の歴史・定義・タイプ等考察    

5- 2- 1. 展示会の歴史

5- 2- 2.  展示会の定義

5- 2- 3.  商談の定義と商談の狙い

5- 2- 4. 売りの結果を出すことを目的とする展示会とそうでない展示会

5- 2- 5. 会期中に売りの完結を目指す展示会は在りか

5- 2- 6. 展示会タイプの再確認

5- 2- 7. 会期中の契約や購買など商談に特化した展示会や見本市にこだわっている開催展示会コンセプトは、成果の規模は期待できるのか

5- 2- 8.  ブース前通行客のプロフィールで分類すると、ターゲットとすべきお客のプロフィールが 2タイプ見えてくる

 

5- 3. ◆ BtoB開催展示会の主たるタイプ

5- 3- 1自発的に顧客に直接需要を喚起し農耕型営業スタイルで展開するBtoB企業の基軸に置く考え方

5- 3- 2農耕型営業スタイル企業が活用する展示会の主たるタイプ

 

5-4. ◆ 出展スタイル概要と生産性の高いブース展開の着眼

5- 4-1需要を自発的に直接創り、その営業スタイルが農耕型のBtoB企業が出展する開催展示会の、出展スタイル概要と生産性の高いブース展開の着眼


5-5. ◆ 顧客取引先への対応

5- 5- 1既存顧客と展示会との関係

5- 5- 2既存顧客は決して、ないがしろにできない

5- 5- 3新規見込み客源泉のパターンは、「購買行動や購買予定行動を起こしたお客」と、「情報収集目的でやって来て興味・関心を持ったお客」

5- 5- 4情報収集を目的にやって来るターゲット顧客のニーズと出展の目的を乖離させてはいけない

5- 5- 5クラスアップ策のテーマ

5- 5- 6既存顧客と新規見込み客の26セグメント

5- 5- 7BtoB企業の取引先(ターゲット顧客・固定客)への向き合い方

 

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5- 1. ◆ 待機・出迎えの機能

5- 1- 1.  チマチマし過ぎた待機の仕方では、成果は他社に持って行かれる

 

だから、祭りの露天商に見られるようなお客が入って来るのをひたすら待つスタイルでは、チマチマし過ぎて出展の目的・目標の願望には届かない結果になりやすい出展者の大半はこのパターン。この実態は会場をこのチェックで一巡すれば、誰にでも容易に判明する。

中には、出展者の責任者と思われる人がブース前に仁王立ちしてお客の流れを睨みつけるような面持ちで見続けている。上司と思われる人がたむろして、腕を組んで雑談もしている。ブース内で、テーブル囲んで小声で密会しているような光景も見かける。コンパニオンの女の子とブース前でじゃれている人も居る。

ある受付嬢が私が通り過ぎようとするときクスッと笑ったので「どうしましたか」と聞いた。すると「これだけ大掛かりな準備をしたのにお客様がさっぱり入って来られないからつい、苦笑いしました。失礼しました」とこぼされたことがあった。マネジメント感覚を持った受付嬢だった。

出展者総数を100.0としたとき、ブース規模の大小を問わず、全体の87パーセントは、この出展者と同類である。

 

チマチマし過ぎた待機の仕方では、生産性が高まらない。少なくともイノベーションの形跡が無い。マーケティングも機能していない。戦略もない。企業の事業においてこのどれ一つでも欠かしては持続可能な成長どころか、維持すら難しいことから、生産性の向上・イノベーション・マーケティングそして戦略は必須である。

その出展企業の担当者も先輩も上司も、部署の責任者も経営者や経営管理者もこの実態に気づいていないか、見て見ぬ振りしているのかはわからないが、過去から今日までこの待機のスタイルは大半の出展者のブース立寄り客が極端に少ない実態に変わりない。

主催者やオーガナイザーも同様、このことに一言も触れないし、サポートしようともしていない。これでは出展者は結果を思うように出せないから、手間・時間・コストに見合う利益はおろか、マイナスであるこの出展者に頼って開催展示会が成り立っているのであるから、主催者やオーガナイザーにとって死活問題のところ、彼らは何も動かないのであるから、この待機法が恐ろしい結果を生んでいることに気づいていないのかもしれない。もしそうであれば、主催者やオーガナイザーも出展者も展示会出展の学習が出来ていないということか

 

どの開催展示会も昔から幾十年もこの問題も解決できていない

確かに出展は諸刃の剣であろうがそう言っているとか思っているだけでは何ら解決しない

集客の工夫は考えて・考えて・考えて。考えなければ成果は他社に行く。それでいいのか

 

自社ブースに立寄らなかったお客が競合他社に立寄って商談に応じることは大いに予想できる

自社でターゲットとして狙っていたお客が直接競合しない他の産業の出展者と商談してその足で会場を去ることもあるだろう。

わざわざ手間・時間・コストを投入して他社に顧客と売上・利益をのし付けてプレゼントする結果を招いて… それで良いのか

 

 5- 1- 2.  名刺情報程度では間の抜けたアプローチにしかならない

 
 

この時点で、顧客情報は何一つ持っていないから、セールスアプローチしても商談にはならない。

セールスアプローチするには、それに役立つ情報を必要とする。名刺情報程度では間の抜けたアプローチにしかならないから、その程度では商談にならない。

コンタクトして名刺を受領することに専念している出展者を多く見かけるが、その企業が会期中および会期後に販売(セールス)に成功して、投入した手間・時間・コストに見合う利益を生んだ話は聞かない

 

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5- 1- 3. ブース展開を見れば「企業力や社長の顔が見て取れる」

 
 

☑ ブースウオッチングすれば誰でも容易に確かめられる「出展者の生産の向上・イノベーション・マーケティング・戦略デザインおよび展示会および出展特有の考え方、出展ならではの展開を駆使するために不可避の展示会メディア特性と好転させるべき制約特性の無さ、つまり

☑ 企業力」を瞬時に、ほぼ確実に観察できることに気づいているか。言い換えれば、それは競合他社をはじめ業界団体からも業界紙等プレスなどからも、そして何よりも大切なお客からも見抜かれていると思わないか

 

開催展示会の会場内を来場客は川のように流れている。 

その中で、当社ブースに興味・関心を示したお客が

開催展示会の87パーセントくらいの出展企業は、立寄り客が入って来るのを待っている

接客担当者はほとんど呼び込みも声掛けもしていないひたすら待機している。それはちょうど祭りの露天商の出迎え方に似ている

会場内をひととおり回遊すれば判明することであるが、大半の出展者がこの体であり、出展に伴う投入した手間・時間・コストを上回る利益が得られているとはとても思えない

このスタイルはチマチマし過ぎている

 

それでいて会期後、

☑ 結果が出なかった原因を「あの展示会は効果が出な」と、他人事のように責任回避していないか

 

このタイプの企業には事業計画推進上不可欠の、イノベーションマーケティング戦略デザインもないため、生産性向上は無く、

しかも、メディア特性や制約特性を好転させるというメディア活用機能も働いて居らず、「メディア効果を成果の最大化に」、の意図もない。

お客が主体的になってブースに立寄ってくるのを待つという云わば「仕掛けていない待機・出迎え」のままの状態を、

お客にも競合他社にも露呈しているのである。

 

☑ では、なぜこのスタイルだと来場客はブース前を素通りするのだろうか

この問題を未解決のままにすると、そのブースを見た人の多くが、成果の出ない、結果の出ない仕事に甘んじている企業だと認識してしまう

 

☑ では、ここで呼び込みを上手くやってブース立寄り客とコンタクトし、結果を出すべきことをせずに見逃したそのお客はその後どのような行動を取ると思うか

 

充たされなかった人はそれを他で穴埋めしたがるのが人情。競合他社に成果をプレゼントするために出展したのと同じ結果になっている

工夫の無いその企業の社長の顔が、ブース前を素通りするだけで誰にも見えているのである

結果を出そうと思えば、結果の出ることをしなければならない集客しなければ結果に結びつかない

 

☑ 投入した手間・時間・コストを上回る利益を生み出すために何をどうすべきか

☑ なぜ立ち寄ってくれると思い込んでいるのか。答えは、展示会の制約特性が邪魔しているのである

 

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5- 2. ◆ 展示会の歴史・定義・タイプ等考察

5- 2- 1. 展示会の歴史

 

我が国の展示会の歴史を振り返ると、1871(明治4)年の「京都博覧会」が博覧会のさきがけ。その後1877(明治 10) 年、ときの明治政府主催による第回「内国勧業博覧会」は、 5回開催された。以降、昭和 40 年代の中頃まで、全国で様々な博覧会が数多く開催された。

この博覧会に対し、貿易振興を旗印とした総合展示会「日本国際見本市(大阪)」が1954(昭和 29 )年に開催された。

見本市と展示会の相違は後述するが、ともかくこれが我が国の「展示会」のはじまり。

これを皮切りに、1954(昭和 29 )年見本市の「東京モーターショー」が、1962(昭和 37 )年には展示会の、「エレクトロニクスショー(現 CEATEC)」が開催され、今日に至っている。
戦後の高度経済成長期を中心に、同じ頃から産業と貿易の振興を主眼とした業種別の各種産業展示会・見本市が次々に創設され、これまで盛んに開催されて来た。

産業振興の展示会と貿易振興の展示会と二分されそうであるが、厳密に言えばこれに加えて、産業振興の見本市と貿易振興の見本市となる。

こうして我が国において展示会と見本市が産業や貿易の振興に大きく貢献してきた。

1986(昭和61年)以降、米国のTrado ShowTrado Fair(取引関係者のみの専門展)を模して持ち込み、我が国の展示会業界はこれによって、展示会と呼称しながらも見本市に似た展示会として変貌した。

この間、現在まで展示会は統一された定義がないままに、主催者銘々の思惑に従って推移したが、2006-7年頃から、「展示会に関する専門用語等の国際標準規格」の準備が関係者から進められ、さらにまた、展示会を東アジアの中の日本と位置づけ、日本を世界市場の中心とした国際見本市を海外企業を参加させて大々的に開催するには展示会場のスペースが狭いことから、東京ビッグサイトの規模を遥かに超える国際見本市会場の建設計画が進められている。

大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」に建設の大阪IR(Integrated Resort=統合型リゾート)には「イノベーションゾーン」が予定され、MICE施設が設置される。これは、世界水準の MICE拠点を形成するもので、最大収容人数6,000人以上の会議室を中心に「国際会議場施設」が、それに併設される「展示等施設」、2つのホール合わせて約 2m2の広さを確保しているので、世界的な展示会や見本市を開催することが可能、という。ここでも「展示等施設」と表現されているが、狙いは「国際見本市」であろう。

結構な話ではあるが、これを推進したオーガナイザーは東京や千葉幕張をはじめ既存施設ホールを満杯にできていないことから、約 2m2の広さを維持できるのだろうか、と懸念されている向きもある。おそらくオープンされればそのオーガナイザー独占の会場となることも考えられなくもない

 

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5- 2- 2.  展示会の定義

 
『広辞苑』は、「展示会」とは「品物・作品をならべて展示する会」とあるが、
 
経済産業省『展示会産業概論』
https://www.nittenkyo.ne.jp/other/document/H2603_gairon.pdf
の、「展示会の定義」によれば、

「展示会」については、展示会の他に、見本市、トレードショー等、様々な言い方がありますが、ここでは“商品やモノを陳列して見せという意味の展示ではなく国や地域を越えたモノやサービス情報の売り買いトレードと商談目的としての展示会を言います
 
と説明し、
日本国内に止まらず世界標準の展示会との位置づけから「国や地域を越えた」云々とし、「売り買いトレード)と商談目的としての展示会を言います。を言う」としている。
つまり、契約や購買目的の商談中心のという意のようである。
そして、
「展示会」の考え方は、関係団体・組織や地域ごとに多様に存在します。そのなかで、定義の統一化を進める動きがみられます。
その中で
米国をはじめ、海外の展示会は、バイヤー(購買権限を持った人)や企業の決済者が商談相手を探しに来るケースが多く見られる、この見本市・展示会が主力となっているが、
 
展示会に関する様々な要素の定義

展示会に関連する様々な要素(来場者、来場者のカウント方法、海外来場者、海外出展者、出展面積、国際展示会)についても、関係団体・組織や地域によって考え方が異なります。国際的な比較や、企業として参加すべきかどうかを判断するための価値・質を検討するうえで、それぞれの定義や指標が異なると不都合が生じてしまうため、考え方の統一が望まれます。
我が国では、ISO25639 定義に準拠する形で、各要素の定義付けを行っています。・・・ と、国際標準化機構(ISO)では、「展示会」の定義(ISO25639 定義)を定めています。

とし、
国際標準化機構ISO、「商品サービス情報などを展示・宣伝するためのイベント」と、展示会を定義している。何か事情があるのだろう。

 

だが、経産省はこれを、準拠する形で
我が国における展示会の定義商品サービス情報などを展示・宣伝するためのイベント(ただし、フリーマーケットや路上販売は含まない)と設定した。
 

一般社団法人 日本展示会協会は、
展示会とは」で、
展示会は単に商品を展示(陳列)する場ではなく、出展者が商談を通じて商品の販売につなげたり、正確な商品情報を伝えたりする場です。同じ呼称で美術館や博物館で行われている「展覧会」とは異なります。「見本市と同義語です。

とホームページに掲載しているにとどめている。

ちなみに、見本市= 
Trade ExhibitionまたはTrade Show ないし Trade Fair(商品(製品・サービス)見本を見せて商談のために開催される催しで、主としてビジネス目的の来場者を対象とするもの)で、Tradeは上掲したとおり「売買」。
 
 

☑ 単に商品を展示(陳列)する場だと出展企業は思っているということか

☑ 出展者が商談を通じて商品の販売につなげたり、正確な商品情報を伝えたりする場です、というが、企業のショールームと同じであれば、投入した手間・時間・コストをかけて展示会に出展する意味はどこにあるのか

☑ 日本展示会協会は、展示会メディアの本質や特性に少しも触れていないが、どう思っているのだろうか

 

プロモーショナル・マーケティングで言えば、課題解決テーブルにおける手段として展示会は「イベント的手段」の範疇となり、
かつて、大阪万博を推進した堺屋太一氏が会長を務めていた一般社団法人 日本イベント産業振興協会で展示会は位置づけられているが、研究は進んでいない模様。
イベント学会しかりのようである。
 
国際標準化機構が同じく展示会をイベント」としているが、広告代理店の視点に捉われすぎている発想である。領域が広過ぎて手に負えないと見ている。
 
むしろ「クローズド・メディアのニュアンスに近い「コミュニケーション・ツール、マーケティング手段としての「展示会メディア」を確立すべきと考える。
 
何故なら、
「イベント的手段」・「商品的手段」・「人的手段」を加えた総合ソリューションメディアであり、メディアパワー活用機能・インストアマーチャンダイジング機能・マーケティングセールス機能・推奨販売機能・小売店の推奨販売機能・セールスイベント機能・インストアマーチャンダイジング機能・ブーシングプロジェクト機能・セールス機能・フロントマネジメント機能・コントロールタワー機能等々のクロスファンクションで展開されることから、この展示会の定義「イベント」は、抜本的に見直さなければならないと考えている。
 

現在進んでいる大阪IRのカジノに隣接するイノベーションゾーン」のMICE施設に併設される約2m2の広さを確保している「展示等施設」で、世界的な展示会や見本市を開催する「国際見本市」を見据えれば、経産省としても一般社団法人 日本展示会協会としても、主たるオーガナイザーにしても国際標準化機構の定義に準拠さざるを得ない事情がありそうである。

 

かつて経産省は、デパートの催事場で繰り広げる「物産展も展示会のひとつに加えていたが、さすがにこれは外している。

外したことは正解であるとの視座で言えば、売り買いトレードと商談目的としての展示会契約や購買目的の商談中心の展示会も「物産展」と同様である点で言えば、経産省が、「モノやサービス情報の売り買いトレードと商談目的としての展示会」が展示会であると断言するのには違和感がある。
 
それは何故か。詳細は別項に譲るが、端的に言って、
経産省が言う「商談目的の展示会」で得られる成果(売上げと利益)は何もわざわざ手間・時間・コストを投入して展示会で獲得するものではない。通常のビジネスステージにおける活動で稼ぐ話である。余分な成果(売上げと利益)をすぐさま得ようと考えるなら、通常のビジネスステージで行うべきである。
 
☑ そもそも需要という市場配分総額の年間の額はほぼ読めていて、それを競合他社と競争して奪い合っているのであるが、その通常のビジネスステージで得られる収獲を何も先取りしているのに過ぎない。それを担当者を編成して、何か月も企画や計画・調整・制作・製作・準備・訓練・告知・実施・報告・見直し・再構築を行う意味が何かあるのだろうか
 
 
☑ 「非日常の商空間に質の高い顧客を招待して、フェースツーフェースでコンタクト(接客)して、通常のビジネスステージ活動では稼げない大きな収穫を展示会のパワーを活用して明日の需要と顧客を創造するこの視点で展示会を見直すべきではないか
 

 

それにしても、この様態の展示会であるなか、「国内では年間約700本の開催件数と推定されています。展示会の無い産業は無いといわれており、毎年増加傾向にある」という

 

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5- 2- 3. 商談の定義と商談の狙い

 
 

商談とは何か

『展示会産業概論』に目を通すかぎり、展示会・見本市において、経済産業省も日本展示会協会も定義付けがなされていない。

3- 3.  「一部主催者の企図に日本展示会協会が呼応し、経産省が方向性を示した来場客のイメージ」の項で、来場客のイメージングで用いた解説のなかの「商談」に関して、来場客をいきなり「バイヤー」と表現したところから始まっている。

「展示会は、企業等が商品・製品を販売するために販売先(バイヤー)と商談を行ったり、市場動向(ニーズ)等の情報収集・情報交換等を行う場です」、の解説のように、「商談」と「市場動向(ニーズ)等の情報収集・情報交換等」を区分けしていることから、展示会や見本市は、売り手側主導で強い売り込み、主に会期中会場内での売りの完結を促した商談と言い、印象としては商談の場であると強調しているように受け止められる。しかし『展示会産業概論』で、商談とは何か、が見えてこない。

 

商談の定義を、仮に「商談とは、取引やビジネスにおいて、主に売り手側主導で、買い手の購買や契約の意思決定を促す活動の手段としての交渉や、買い手側からの相談や確認事項などについての話し合いのこと」 … としたとしても、未だ伝わってこない。

 

「売り手が提供する商品(製品・技術・システム・サービス)の価値、および提供価値にたいし発した情報(シーズ)とヒアリングによって働きかけ、買い手が抱く利用価値のニーズの度合いのすり合わせの結果、売り手の商品の機能の優位性、提供条件、価格、納期などについて買い手が理解、了解したうえで納得し、購買の意思決定する過程の、発展した話し合い」と、肉づけると、少しは読めてくる。

最終的には、「相手方と取引についての交渉や話し合いをすることで、売り方と買い方双方のベネフィット(メリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)を目指して行うこととなり、商談成立後、新たな取引の機会が生まれ、売り手側のビジネスの発展に寄与することになるため、更に発展させ顧客価値を高めるプロセスに向けた重要な活動手段を言う。 ・・・ 

 

と、仮説して改めて『展示会産業概論』を見直すと、それに記載があるように、「展示会は出展者が商品を販売するための場」となっており、このことから「商談会」を意識してしまう。

 

随所にメイン来場者は商談目的のお客であると、ちりばめて語られているが、片や(日本の)展示会・見本市は、「情報収集を目的とする来場客が多い」ことにも触れている。

「商談」を定義づけることなく、暗に、「契約や購買目的の商談中心の展示会にやって来る契約や購買目的の商談客を展示会や見本市のメインターゲット顧客としているかのようである。

 

情報収集を目的とする来場客が多い」が、出展者にとって「展示会は出展者が商品を販売するための場」 … ここに乖離が生じる。

この発想は何から来るか。おそらく、この見込み客の来場を推奨しているのは、主催者やオーガナイザーにとって、結果を出す企業に出展してほしいからであろう。

主催者は、この趣意踏襲の出展者の誘致に精力を注いでいる。経産省も日本展示会の狙いはここにあるようである。

 

ところが、そう呼びかけてもほとんどの来場者は情報収集目的でやって来ているのが実情である。経産省も日本展示会も「既存の顧客だけでなく潜在的な顧客の声も聞くなどコミュニケーションを円滑にして、これら来場客の声をマーケティングに反映する」と、『展示会産業概論(P.139)』に、この程度しか記載がない意味で、彼らの描く望ましい来場客と実情に大きな乖離が生じている

 

そこで話題を主題に戻すと、この乖離状態で進行して出る結果は、それなりではないか、という疑問が一つある。

そして、「情報収集を目的とする来場客には、新製品開発のネタ探し程度の認識のようであるが、主査の開催の告知に、花見客ばかりがやって来るのだろうか。告知内容。告知の相手、告知方法は検討されてのことであろうから、まったく見込みのないお客とは思えない。

 

冷やかし客はもちろん居る。この人は冷やかしが目的であるから、ブース立寄り率は高い。競合他社の回し者も立寄り率は高い。だが、競合他社からの鞍替え客や休眠客の立寄り率も高い。それぞれの対策を講じて、ヒューマンエラーを起こさない配慮も商談業務の一つと言える

 

情報収集を目的とする来場客について、少し具体的になるが、いくつかのプロフィールがあるから、商談対象として、対策を講じておきたい。

来場客層をピラミッド構想で見ると、おそらく、上位35パーセントのお客は、その産業界・その市場・業界にとって、他に最も影響力を持つ顧客であろう。最大限のもてなしが必要である。

その下位の15パーセントくらいのお客は、事業にたいして積極的に何らかの変化に適合しようとして、イノベーション(技術革新+しくみや制度の革新+運用や利用の革新など継続した改善)ダイナミズムに触発された顧客であろうし、進取性に富んでいるであろう点において、新しい製品新しい商品新しい技術新しいシステム新しいサービス新しい利用方法新しい情報新しい動向に敏感であろうことから、出品され紹介されていることには強く興味・関心を抱いてやって来るであろうし、新規見込みも大いに期待できるお客と言えよう。

その下位にある35パーセントくらいのお客は、上位20パーセントくらいのお客ほどでなくとも現況市場業界を支えるビジネスに活発な活躍をしているであろうし、その中には市場新規参入企業も混ざっているであろう。このトータル55パーセントくらいのお客は、ニーズが顕在化していると見たとき、ほぼ確実に商談対象と言えるだろう。

では残りの45パーセントくらいのお客をどう見るか。中にはニーズが顕在化しているお客もあるだろうし、その強弱ははっきりしているかもしれない。あるいは、潜在化のお客もあるだろうが、休眠客や、相手にすべきでないお客も内在しているであろう。花見客は当然この下位に属する。

 

こうして見てくると、

幾つかのプロフィールに分類できるから、それらに応じた対策も良し、一本か二本に絞った対策でターゲットを明確に定めたうえでの商談が望ましいのではないだろうか。

展示会はバイヤーをふくめ、わんさとお客がやって来るから、販売先(バイヤー)と商談を行ったり、販売するための情報交換等を行う場です」との印象と、強い売り込み、主に会期中会場内での売りの完結を促した商談を行うのが展示会と認識しているかもしれないが、お客情報を収集しニーズを確かめキーマンが誰でいつ満足を求めていて商談を進める前段階で適切なベネフィットメリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便などを提示し商品製品・技術・システム・サービスの機能や品質の優れた点をアピールして購買行動や購買予定行動を起させ成約に取り付けるまでのコンタクト接客回数や日数を通常の販売活動でどれくらい要しているか受注率成約率は何パーセントかなどにたいしいつ何社ブース前を通過するか誰もわからない環境の展示会にあって販売先バイヤーとの商談が行なえる機会は誰が保証できるのであろうか

短期決戦型販売活動とは別に、機能や品質の優れた点を力説するアピールに徹したステージパフォーマンスや展示・陳列コーナーあるいは商談コーナーでこの光景をよく見かけるが、お客は聞いていないことを承知の上だろうか。

ターゲット顧客が、情報収集目的であろうと、企業が事業を通じて行うすべての活動は、「売上げを拡大し、安定した大きな利益を得て、競合他社に勝利し、マーケットシェア(市場占有率)を高める」を目的にしている意味において、事業を通じて行うすべての活動は広く捉えれば「商談」であると言える意味において、PR中心のパフォーマンスやアピールは、PRすることだけにこだわったのであれば、販売には至らないことがほとんどである。

締めで言えば、

問題は、会期中売りの完結目的の商談は極めて非生産的であることを認識すべきである

 

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5- 2- 4. 売りの結果を出すことを目的とする展示会とそうでない展示会

 
 
「展示会とは何か」、つまり「展示会の定義」は、我が国において明確に定められていない。いないままに、開催されている展示会は、次第に見本市化されて来ている。
 
井澤道夫著『展示会実践マニュアル(その仕組みとプロモーション』㈱ピーオーピー出版企画室刊によれば、

「呼称には、展示会、見本市、ショー、フェア等々があるが、これらの定義・区分は明確に存在していないとしながらも、
 
取引関係者のみの専門展は、Trado ShowTrado Fair
売りの結果を出すことを目的とする展示会のニュアンスの強い展示会は、FairShowよりは取引・商談のエレメントが大で専門展の中の専門展)、ドイツのMesseは専門業者限定見本市。
 
消費財の見本市などをShow
取引・商談のエレメントが大きくない展示会をExhibition

・・・として、売りの結果を出すことを目的とはしていない展示会と区分けしている。
 
ドイツでは、このタイプをAusstellung((独語:アウスシュテルングと呼んで、販売促進のための情報提供中心の展示会としている。
また、博覧会は
ExpositionExpo)、一般展・小規模博覧会をPublicShowと呼称し、この二つは、売りの結果を出すことを目的とはしていない。


・・・この井澤道夫氏による説明で明らかなように、展示会と見本市の定義・区分は明確に存在していないなか、売りの結果を出すことを目的とする展示会とそうでない展示会を明らかにしている
 
 

蛇足であるが、専門展示会の呼称に「Expo(=Exposition)」つまり「〇〇博覧会」と名付けて毎年開催している見本市があるほど、この辺りの整理ができていない業界というよりもオーガナイザーが今もダイナミックに闊歩している

 

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5 - 2- 5. 会期中に売りの完結を目指す展示会は在りか

 
 
ところが、我が国において、「会期中に契約や購買促進を中心とした商談に特化した見本市」と銘打って開催しても、来場するお客は、「商談」ではなく「情報収集」が目的であることから、
 
前項の「⑴ 会期中に契約や購買促進を中心とした商談に特化した見本市」の開催展示会に出展しても、結果は「契約や購買促進を中心とした商談」にはなりにくく、会期中「情報収集目的のお客」にも対応せざるを得ない。
 
仮にこうしなければ、早晩来場者は激減して、その展示会は開催されなくなってしまうおそれがある

 

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5- 2- 6. 展示会タイプの再確認 

 
 

「呼称には、展示会、見本市、ショー、フェア等々があるが、これらの定義・区分は明確に存在していないとしながらも、

ここで、「展示会タイプの再確認」をしてみたい。

 

取引関係者のみの専門展は、「Trado Show」または「Trado Fair

ドイツの専門業者限定見本市は「Messe

Showよりは取引・商談のエレメントが大で専門展の中の専門展の、「Fair

消費財の見本市などを「Show

取引・商談のエレメントが大きくない展示会を「Exhibition

ドイツでの販売促進のための情報提供中心の展示会を「Ausstellung(独語:アウスシュテルング)

 

産業振興・貿易振興によって最終着地点を「売り」とする展示会の領域としては以上で、

ExpositionExpo)やPublicShowは、博覧会、一般展・小規模博覧会と呼称されることからもそれから外れるから、「展示会」というときはこれらを含めない方がよさそうである。

・・・ と言いながらも、我が国において現状、これら呼称を用いる展示会・見本市はほとんどないことから、整理し直すと、

生産財・消費財における展示会として

⑴ 会期中に契約や購買を中心とした商談に特化した見本市

⑵ そこまでの徹底振りはないものの、取引関係者のみの専門展・専門業者限定見本市

⑶ 取引・商談のエレメントが大での専門展

⑷ それよりも取引・商談のエレメントが大ではない専門展

⑸ 販売促進のための情報提供中心の展示会

に大別される

 

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5- 2- 7.  会期中の契約や購買など商談に特化した展示会や見本市にこだわっている開催展示会コンセプトは、成果の規模は期待できるのか

 

☑ この趣旨の見本市の実際の効果測定や開催展示会トータルの売上げなどが数値化されているのだろうか

☑ もっと言えばすべての出展者のROI効果を主催者は正しく把握しているのだろうか

観察調査であるから、正確ではないが、大半の出展者ブースにビジネスになるほどの見込み客が商談している光景になっていない。

出展者は、契約や購買など商談に特化した出展を目的としている。片や来場客は「情報収集が目的」でやって来ている。

 
「契約や購買目的の商談中心の展示会」、ほぼ同様に意味で言い方を変えれば「売り買い(トレード)と商談目的としての展示会」をこれからのあるべき展示会であるかのように主張する主催者があるが、このタイプの主催者がこの定義の旗印を掲げ、出展企業もその気になって出展するのであれば、その企業の思惑と結果に齟齬が生じるおそれが多大となるはずである。
 
それは、主催者の告知になびいてわんさかやって来る来場客のほとんどは情報収集が目的に起因する。
主催者は、売りの結果を目指す。
 
企業は展示会に出展すれば、「契約や購買目的の商談中心」、「売り買い(トレード)と商談」の展開で、投入した手間・時間・コストを遥かに上回る大きな利益を期待しているに違いないが、大半の来場客は情報収集が目的でやって来ている。
 
人間は目的で行動するから、双方が不満となる。
 
この、「来場客が情報収集を目的にやって来る」という事実実態は今に始まったものではなく、1954(昭和 29 )年来、一貫している。
そして、1987(昭和62)年頃までの主催者やオーガナイザーは、情報収集を目的にやって来る来場客に向き合ってフェースツーフェースでコンタクト接客しながら、ていねいな対応をすることでそれなりの成果を得ていた。
 
1974(昭和49)年高度経済成長は終焉を迎えたが、その後不況になって、企業は展示会に積極的に参加して、宣伝すれば売れると湧き合った。
宣伝すれば売れたのは高度経済成長期であったからとは気づいていなかった。
 
宣伝広告で売れないばあいは販売促進で、と思ってそれに力を入れた。しかしそうはならなかった。販売促進でも売れなくなっていた。
その後、デフレスパイラルに陥って、今日に至っている。
 
こうした決定的な市場変化で右顧左眄するなか、展示会業界に米国のTrado Showに触発されたオーガナイザーが1987(昭和62)年から、展示会は「契約や購買目的の商談中心の展示会」にすべきと唱え席巻して次第にこの方向になって行った。
 
だが、来場客との齟齬には手を付けられなかった。
それまでの他の日本型展示会の主催者やオーガナイザーは、「情報収集が目的の来場客」に対して、宣伝広告中心でも販売促進中心でを脱皮して、その後の長く続いた経済不況下にあってどのうな着眼で出展すれば、結果、「売上げを拡大し、安定した大きな利益を得て、競合他社に勝利し、マーケットシェアを高める」ことが実現するか、をベクトルにして、その成果(目的・目標)に向けてマイルストーンを掲げたと言えようか。実現できなかったからこそ、米国のTrado Showが展示会だと唱え続け、業界を席巻し、それに吞まれた。
 

別項で事前プロモーションの展開の延長で出展ブースに立寄らせて、「契約や購買目的の商談」を確立するオーガナイザーがあったが、このこともふくめて、顧客第一主義を踏襲して「情報収集が目的の来場客を対象とした日本型の、日本特有の、日本ならではの展示会づくり」を志向したいものである

 

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 5- 2- 8.  ブース前通行客のプロフィールで分類すると、ターゲットとすべきお客のプロフィールが2タイプ見えてくる

 

 

 

来場者」は、来場の目的別で区分けして定義づけされている。「情報収集商品の購入出展者との契約を目的として展示会に参加する人」この  3 つのパターン。(参照: 経済産業省pdf『展示会産業概論』「第1章展示会とは - 来場者の定義」)

商品の購入とは、一般消費財をシーズンごと、または年間単位で仕入れ商品の買い付け、買取、仕入れ、引き合いを目的に地方からもやって来る小売業対象の消費財 BtoB 見本市・展示会で、例えばTOKYO INTERNATIONAL Gift Showなど。

例えば スマートエネルギーWeekなど生産財の展示会で、出展者との契約が、BtoBスタイルの商談による展示会と定義されている。

この商品購入出展者との契約を目的とした開催展示会の主催者は、商品購入販売契約をコンセプトにして、展示会を商談の場と位置づけバイヤーや購買担当に告知し、来場を促進している

『展示会産業概論』には、情報収集目的のお客はお客と見ない主催者もあるようである、と記載がある。

また、より契約等の商談を強調して特に米国のトレードショーTrado Showタイプの展示会を日本国内でも定着させようとする主催者もあるようである。

このような計らいで、出展者側で見る展示会の来場者」は、出展者との契約目的のお客商品の購入がメインであると認識し、そのつもりで出展している企業も少なからずあるようである。

そして、来場者総数が 7 万人強とか 10 万人であるとアピールする。だが、バイヤーや購買担当に告知し、来場を促進しても、日本において、「情報収集を来場の目的」とする来場者が圧倒的に多く来場している。

詳細の理由は詳らかでないが、『展示会産業概論』を読むかぎりこのお客はお客と見ない主催者もあるようである。この考えであれば、情報収集目的のお客はお客と見ない傾向にあるとも言えそうである。

しかし定義付けられているように、情報収集目的のお客お客である。日本で開催される展示会のほぼすべてに近い大半の「来場者」情報収集目的のお客である。この来場者の割合が高いのが実際で、日本型展示会の特徴の一つである。それは、一般流通で帳合制度が直接販売を規制していることや展示会がマス4媒体に継ぐ第五の広告メディアと位置づけ、産業振興を目途に大々的なPRショーとして育って来た背景が今日の日本型を形成した。

しかもここで重大なテーマについて触れたい。それは、通常のビジネスステージにおける活動を通じて、「需要の喚起・拡大と顧客づくり」がどこまで達成できているか、である。仮に出来ていたとしても、このテーマは際限があるとすれば市場が飽和状態になるライフサイクルの円熟期以降であるが、それまでの間、追求し続けるテーマで、事業計画達成のための最重要テーマであり、短期決戦型販売戦略の遡上というよりも中期マーケティング戦略で果たされるテーマである。

このテーマに基づいて、多くの見込み客とダイレクトにコンタクト(接客)して達成できるメディアや手段は他にもあるが、コスト面で展示会を超えるものは存在しない点において、展示会は比類のない極めて優れたメディアであると言える。

そこで、企業は情報収集目的のお客を分析して、このターゲット顧客にたいして展示会出展ブースでどのように働きかけることが生産性を高められるかを考え、そのためのイノベーションやマーケティングや戦略をどう講じるか、これを出展企画の基軸にすることが現実的な課題となる。

商品(製品・技術・システム・サービス)を販売するためのステップを踏まえると、

購買行動を起こすお客で購買決定権者、購買行動を起こすお客で購買責任者、購買行動を起こすお客で購買担当者、購買行動を起こすお客で商品(製品・技術・システム・サービス)使用責任者、購買行動を起こすお客で法務担当者など関与者、購買行動を起こすお客で、商品使用担当者に分けられる。

購買予定行動を起こすお客も、購買予定行動を起こす予備軍のお客も、購買予定行動を起こすニーズが無いお客も、同様に分類できる。その他花見客も居る。

少なくとも、ニーズが顕在化しているお客と潜在化のお客のポテンシャリティや緊急度などは探ることを前提に、策を講じて臨むことで、見込み度の高い顧客を会期中に創り出せる見込みはある

 

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5- 3. BtoB開催展示会の主たるタイプ

5- 3- 1.  自発的に顧客に直接需要を喚起し農耕型営業スタイルで展開するBtoB企業の基軸に置く考え方

 
 

BtoBが、「売り手の自社to元請け」である場合、需要(市場において購入しようとする欲求。購買力に裏づけられたもの)は「派生」となるが、需要が元請けではなく市場における数多くの「法人顧客」と取引しようとした場合の需要は、「直接」となる。

 

自社が自社商品(製品・技術・システム・サービス)を多くの法人顧客を対象に販売しようとするとき、想定される買い手情報を得て、相手を替えて複数の人からの同意を得て行き、「ニーズ・導入時期・予算・決裁権」などが明らかになる。

複数の相手を替えるとは、利用・使用する担当者と責任者以外に、関連部署の担当者や責任者、研究・開発部署や購買部署の担当者と責任者や法務担当者も絡むだろう。予算化には財務・経理担当者も絡み、決裁権を持つ経営者や経営管理者も絡む。立場によって受け止め方が変わることもあって、それぞれの違う立場に適合した展開が求められる。

一人でも反対があれば商談は成立しないだけに、実態を把握しながら、ニーズに関して、潜在化されているときは顕在化するよう働きかけ、顕在化されたとしても利用・使用あるいは導入に伴う諸課題を個別の見極めをしつつ、営業活動は推進される。

そして顕在化したニーズを満たすためにベネフィット(メリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)を考え抜くことになるが、このベネフィットも買い手企業の立場によって変わるであろうし、何よりもキーパーソンの同意を必要とする。

このニーズとベネフィットのテーマの先に、導入時期・予算・決裁権の問題も解決しなければならない。

 

しかしながら、対象の法人顧客は、市場に数多く存在しているため、一般流通の直接需要と同様に、自発的に需要の喚起・拡大策を掲げながら、競合他社よりも先に取引できるよう努めることになる。

 

これら一連の活動を、市場で多面展開する訳であるから、同時並行するところのシステム営業の基底に置くことは、需要の喚起・拡大策であり、購買予定行動や購買行動を起させる段階、導入以前の段階、導入決定時の段階、導入時の段階、導入後の段階、導入後の利用価値を高める段階、更に顧客のお客の満足を充足させる段階などを通じて、顧客価値を高めることが求められるのであるが、それら実現には絡む人たちとの関係づくりが重要なテーマとなる。この意味で「顧客づくり」を同時並行して進めることになる。

 

一旦取引が成立したとしても、利用価値を高め、顧客価値を高めることでつなぎ、販売した商品の改良版を出せば取引は続き、他部署で他の新たな需要が芽生えれば呼応して新たな供給をという風に、需要の喚起・拡大と顧客づくりは、個別の見極めをしつつ、多面展開する。

 

市場において多面展開で生産性の高い営業活動をするためには、質の高い顧客が多く存在するターゲティングも重要テーマである。

市場には、優勢市場を支配することは言うまでもないが、ポテンシャルが大きいが故に拡大すべき市場、競合他社を寄せ付けないための強化すべき市場、今だからこそ重点を置くべき市場、維持すべき市場など主戦場をどこに据え置くかの視点も外せない。これらは開催展示会選択基準とも関係する。

このようなことから、畑を耕し、種を蒔き、花を咲かせて実りを収穫する農耕型の営業スタイルを踏襲することが望ましいという視点で、BtoBの展示会出展を考察する。

 

序ながら、自社にたいし買い手のターゲット顧客が元請けの場合、展示会出展はそことの依存度が大きく減少することが考えられ、また営業スタイルが狩猟型の企業も展示会出展も適切でないと言える

 

5- 3- 2.  農耕型営業スタイル企業が活用する展示会の主たるタイプ

 


一般流通における食材・化粧雑貨・文具・玩具など消費財の小売業のバイヤーなど仕入れ担当者が、シーズンごとの商材を求めてやって来る展示会は、分かり易く例えれば、デパートで実施される物産展に似て、売りたい出展者がブースを構え、仕入れたいとか買付け目的で小売店がやって来て、展示会場で商談が成立するスタイルの成果は、それなりのことで終わる。

だが、BtoBの農耕型営業スタイル企業が出展する開催展示会は、会期中に売りの完結を目的とせず、通常のビジネスステージにおける活動で不十分とされる中期マーケティング戦略のテーマである需要の喚起・拡大と顧客づくりを実現するため、ビッグビジネスに向けて足掛かりのプラットホームのブースから会期後の商機にブリッジングする展示会に出展し、この活動を通じて競合他社と共に市場規模を拡大し、集積メリットのシェアリングを通じて産業を振興し、経済の活性化に貢献する開催展示会に出展する、という視点で考察を進めてみたい。同感してももう一度考え、同感しなくてももう一度考えるに値すると思っている

 

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5- 4. ◆ 出展スタイル概要と生産性の高いブース展開の着眼

5- 4-1.  需要を自発的に直接創り、その営業スタイルが農耕型のBtoB企業が出展する開催展示会の、出展スタイル概要と生産性の高いブース展開の着眼

 
 

需要を自発的に直接創るのであるから、展示会に出展してやって来る顧客に直接コンタクト接客して刺激を与え、ターゲット顧客が購買力に裏付けられて欲しいから購入したいと求める、すなわち需要を喚起し、市場内で拡大を図る

そのための営業スタイル(業態)は農耕型。顧客第一の姿勢で既存顧客を育て新規見込み客を獲得する。

BtoBであるから、この既存顧客と新規見込み客がメインターゲット顧客であることには違いないが、顧客第一の視座で言えば、「ターゲット顧客あるいはターゲット顧客のお客のために商品価値とニーズを結んだベネフィット(メリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)を提供すれば顧客は満足であるかを考え抜いた提言を提供することが望ましい

顧客が求めているベネフィットは何かの提案があればやって来る顧客は満足するだろう。

換言すれば、出品商品(製品・技術・システム・サービス)の基本価値付加価値時間価値経済性の価値新しさなど希少価値顧客への提供価値供給価値利用価値事業価値事業以外の価値企業価値継続利用価値更なる顧客価値経済価値社会価値価値の連鎖が、ターゲット顧客あるいは、ターゲット顧客のお客に響く価値と顧客ニーズを結んだ提案が求められているのであって、商品の機能面の優秀性などをいきなり強調しても顧客は響かない

展示会にわんさとやって来るお客は、このいずれかの価値の連鎖情報を収集しようとしてやって来る

また、やって来る既存顧客は自社出展ブースを目指すと思われるが、新規見込み客はそうはいかない。会場内を対流し、川のように流れ、強く触発されたところにしか立寄ろうとはしないから、見込み客を引き寄せるには仕掛けと努力を必要とする

この仕掛けと努力は、事前に終わらせておかなければ間に合わないことになる。

この事前準備のための知識も経験もスキルもなく、達成意欲だけあっても良い結果にはならない

解決すべき課題は山ほどある」のであるが、企業リソース経営資源が充実している企業は、この「山」は少ないから、ブース展開においてシンプルな形ではつらつ(溌剌)とやっている

その活発で盛況なブースは、展示会ウオッチングで容易に見て取れる。

反面、企業リソース・経営資源が充実していない企業の場合は、新規見込み客を引き寄せることができずに、ブース内は閑散としていて、接客担当者は手持ち無沙汰の様子。

この状態は、事前に準備できていないから閑散となるのである。毎回出展のつどこの負のスパイラルを繰り返せば、その企業は衰退の一途を辿ることになる。

小規模な企業も事前に効く準備を完了して出展していると、小間は小さくても活況を呈している。間口3メートルの基礎小間を構えた出展者でも終始盛況なブース展開しているところが、会場内に見て取れる。展示会出展の成(目的・目標)企業規模を問わないのである。

マーケティングなどを知らなくても、⑴「生産性」 ⑵「イノベーション(技術革新+しくみや制度の革新+運用や利用の革新など継続した改善)」 ⑶「マーケティング」 ⑷「戦略で果たすべきコトがバランスよく機能していると、とてつもなく大きな収穫があるのが展示会である

 

殊に、人的資源によるところが大きく、展示会に出展して他社よりも大きな収穫を獲得するために必要な機能と役割が明確化されたうえで、その機能を果たすための適性能力を持ち合わせていて、成果達成意欲のある企業の出展結果は半端じゃない。だから、通常のビジネスステージにおける活動もそうであろうことから、稼ぎ方は尋常でない筈である。

しかしながら、この機能と役割を果たしただけでは、出展成果(目的・目標)は最大化しない。何が欠落しているか。この着眼を外さずに展開している出展者が展示会で大きな成果を得ている。

この着眼とは、「展示会をメディアと捉えて活用している」のである。投入した手間・時間・コストを上回る利益を生み出すから出展しているのであるが、その効果が展示会ならではで存在するから効果が出て成果を大きくする

効果は効果の出ることをして初めて効果となる効果の出ないことで終始すればいつまで経っても効果はない

出展準備とは主にこの準備である

先の項で、「マルチクライアント方式だからわんさとやって来る見込み客に低コストでコンタクトできる展示会は比類がない」ことに触れたが、マルチクライアント方式は逆に、「目と鼻の先に競合他社も出展しているから、「展示会は勝者が容赦なく獲物を獲得する場でもある」ように、裏の関係性を特性としている

 

☑ 会期中、「販売や契約など商談目的の出展」、すなわち、年間・半期・四半期・月間の目標を追う短期決戦型の販売計画・販売戦略、言い方を変えれば「販売の完結を求め受注を中心としたセールスに専念する」出展スタイルは、通常のビジネス活動となんら変わらないと思わないか

☑ 通常のビジネスステージにおける活動で行うべき行為をなぜわざわざ非日常の商空間化したブース展開で行おうとするのか

☑ 非日常の商空間化したブース展開にふさわしいROIまたは費用対効果B/Cの「1」を遥かに超える大きな成果を目指せるものを見捨てて、その機会ロスを招いていると思わないか

☑ 短期決戦型の販売計画・販売戦略は展示会出展では割に合わないと思わないか

 

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5- 5. ◆ 顧客取引先への対応

 5- 5- 1.  既存顧客と展示会との関係

 
 

展示会出展者の多くが、新規見込み獲得中心の出展としている点において、これまで主にそれを基底に解説して来たが、

これには決定的に大きな問題がある



☑ 既存顧客を招待せずに新規見込み獲得中心の出展としたばあいどのような決定的に大きな問題が発生すると思われるか

この問いに関連して補足すれば、「ビジネスはお客の多い方が勝利する」と言われるように、顧客数は競合他社よりも多くすることが求められるのであるが、問題は、「固定客は必ず減少する」のであるから、減る分の穴埋めで、常に固定客は一定数確保する必要がある。

この作業が通常のビジネスステージにおける活動で実施されて成果(目的・目標)は確保できているだろうか。

そこでは、売上げ追求とかそのための企画立案に時間が割かれて、できていないばあい、展示会でそれが実現できるのである。

 

もちろんその企画は、需要の喚起というテーマを絡めてのことである。そして顧客対策のテーマは顧客の育成となる。

顧客を育てるために需要の喚起をしつつクラスアップを図ることにほかならない。「花も実も根のちから」だ。

展示会出展で、このことが実現できるのである。

 

特に商談を重点に契約や購入客をメインターゲット顧客にするのであれば、会期前の事前のプロモーショナル・マーケティング活動で下地をつくり、そのうえで展示会出展ブースで実機など商品(製品・サービス)の現物を見せ、価値に触れさせ、その気にさせて云々が、出展成果を高めると説明した。

これが出来るのが、見込み度の高いお客と、既存顧客となる

 

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5- 5- 2.  既存顧客は決して、ないがしろにできない

 
 

日本展示会が示す経済産業省『展示会産業概論』で、既存顧客のことはほとんど語られていない。

反面、展示会は新規顧客が多く獲得できるとしながらも、特に、「契約や購買目的の商談でやって来るお客」を、展示会や国際見本市の来場者と位置づけている。

確かに、新規顧客が多く獲得できる展示会であり、ブースウオッチングすれば、出展者の大半がこれを目的にしたブース展開となっていることからも、出展者にとって新規顧客が多く獲得に大きな関心があることが分かる

日本で開催されている展示会において、この傾向は1986(昭和61年)以降顕著になって来た。その後開催のつど、開催される展示会は、大規模商談会のように、米国のTrado ShowTrado Fair(取引関係者のみの専門展)を模して行われるにつれ、既存顧客対応のブース展開が縮小された。

高度経済成長期の一般流通関連の産業振興の展示会の衰退などから、展示会自体が変貌してきたことも起因するのであろうが、それまで、日本の展示会は既存顧客をご招待しての開催が主流であった。市場・業界の生み出す成果・収獲をこぞって寿ぎ、特別の僅少な会場を祭りのように非日常化し、日頃の感謝の念に感謝して特に既存顧客をご招待していた。

これが俄かに変容して、通例であった招待状は姿をほとんど消してしまった。つまり既存顧客のご招待を控えめにして、新規見込み客のなかの、「契約や購買目的の商談でやって来るお客」をメインターゲットにしてきた。

むろん、新規顧客獲得は必須で不可欠で、不可避テーマである。だが、既存顧客をないがしろにすると、大変深刻な憂き目に遭う。

☑ それは何か

この問題を見誤らないようにしなかった企業は、当該市場や業界から姿を消している。その始まりは、展示会出展を取りやめたことに依るが、取りやめたのは、新規顧客獲得一点に絞って出展を繰り返したこの顧客戦略を見失ったからだ

☑ さてどうするべきか

 

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5- 5- 3.  新規見込み客源泉のパターンは、購買行動や購買予定行動を起こしたお客、「情報収集目的でやって来て興味・関心を持ったお客

 

新規見込み客を分類すると、

⑴ 会期前もしくは会期中のブース内で、「購買行動や購買予定行動を起起こしたお客」

このお客には、① 利用・使用する担当者と責任者   ② 利用・使用する関連部署の担当者や責任者   ③ 研究・開発部署のお客   ④ 購買部署の担当者や責任者   ⑤ 法務担当者   ⑥ 財務・経理担当者   ⑦ 決裁権を持つ経営者や経営管理者

が考えられ、それぞれの立場に適合した展開が求められる。準備できていなければ、競合他社ブースで「購買行動や購買予定行動を起こす」かもしれない。

 

⑵ 情報収集目的でやって来て後、「興味・関心を持ったお客」

⑧ この中で、ニーズが顕在化しているお客   ⑨ 更に詳しい情報を競合他社商品も含めて集めようとしているお客   ⑩ ニーズが未だ潜在化状態のお客   

・・・ などに分類されるであろうから、短時間のコンタクト(接客)において、ブース内で何が達成できるのか、会期後のアフターセールスやアフターフォローでのアプローチの優先度・緊急度を明記することはしておきたい

 

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5- 5- 4.  情報収集を目的にやって来るターゲット顧客のニーズと出展の目的を乖離させてはいけない

 
 
 

来場客は購買または商談目的でやって来るお客と、情報収集を目的にやって来るお客に大別される。

後者について経済産業省は、pdf『展示会産業概論』にて、

① 展示会は、企業等が商品・製品を販売するために販売先(バイヤー)と商談を 行ったり、市場動向(ニーズ)等の情報収集・情報交換等を行う場です。

② 来場者は、情報収集、商品の購入、出展者との契約を目的に展示会に参加する人

③ 展示会開催期間は、様々な情報を収集する絶好の機会です。

の記載はあるが、開催展示会にやって来る大半のお客は情報収集を目的にやって来るお客とまでは及んでいない。

主催者の情報にも員数は公開されていない。当該専門展の情報収集を目的にやって来るお客が初日・中日・最終日それぞれ何社やって来るかが、主催者やオーガナイザーにその情報があれば、利用できるかもしれない。

 

☑ だが、一口に「情報収集を目的にやって来るお客」と言っても、多様であるから、更にセグメントされた情報があれば、精度の一層高まる企画が立案されそうであるが、入手可能であろうか

 

入手できなければ出来ないなりに出展企画立案で出品対象商品(製品・技術・システム・サービス)の自社にとって質の高いお客を想定して、「情報収集を目的にやって来るお客」の中の、そのお客のプロフィールと利用・使用・活用のT・P・Oを描いて、そのお客を更にニーズ健在者と潜在者に分類し、喫緊性を考慮してのブース展開を構築することが求められる。

 

ところが出展の事前にこれら下準備を実施せずに出展したとなれば、例えば、出品商品のニーズがあって、アバウト利用・使用・活用のベネフィットメリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)を描けている有資格客が来場してもそのお客がいつ、何社ブース前を通過するかしないかは誰一人読めない読めないまま待つ姿勢のブース展開であれば大海で一本釣りを行っているようなもので出展の成果を出すのは極めて難しい

☑ このスタイルで出展していないか

 

主催者の告知に期待できるかどうかはわからないが、働きかけてそれが実現できる方策が見出さられるのであればお願いすることに躊躇する手はない

 

出来ないとき、出来ないままにする訳にはいかないから、自社独自でどのように告知し招待するかを構築する。これも出来なければ、大海で一本釣りするなか、このターゲットを引き寄せ釘付けにし、プールしてその気にさせて、商品展示コーナーに呼び寄せるかを立案することになる。

☑ このプランを練ったうえで出展しているか

 

☑ 主催者が来場したお客に呼びかけて各社出展ブースに足を向けさせる施策をあの手この手と講じて、ブース立寄り促進が図れなければ替わって館内放送で呼び寄せるように働きかけるべきではないか

 

☑ いずれにしても、「情報収集を目的にやって来るお客」の中の、自社出品商品のニーズがあって有用情報を求める自社にとって質の高い見込み客にたいする需要の喚起と顧客の創造を講じて出迎え呼応して安定した大きな利益をもたらす固定客に重きを置くことで商機にブリッジングしたいのであるが、これを行う企画を立案して臨んでいるか

 

☑ 本来この立案は、通常のビジネスステージにおける活動でも実施すべきテーマであるが出展した非日常の商空間の展示会でも実施せず、お客のほうからのブース立寄りをひたすら待って、結果ブース前素通り率97~98%の状態に多大な手間・時間・コストを投入する意味がどこにあるのか

 

☑ 来場者の大半の有用情報が欲しいと思ってやって来るお客を軽視して出展の意味がどこにあるのか

 

☑ この有用情報を求める自社にとって質の高い見込み客、どこに立寄れば入手できるのかを知らされていないまま、川のように会場内を流れているとすれば、それは漂流させてしまっているに等しい。商機を求めてやって来るお客に応じてあげないのは売り手のほうからその芽を摘んでいることになるのではないか

 

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5- 5- 5.  クラスアップ策のテーマ

 

 

 

既存顧客になったものの、利用価値や利用方法に知識が足りないで利用が滞っている顧客にたいしてどうすればこの問題が解決するか。
成功すれば、必然的にクラスアップする。
 
ニーズが明確に顕在化していなければこれがテーマの活動となる。
使用頻度が少ないとか、利用の応用がないばあい、それなりの動きとなる。
 
こうして、Eクラスの顧客をDCに、BクラスをB上クラスに、さらにAクラス、Sクラスへとクラスアップして、利用価値顧客価値を高める
 
このクラスアップによって発生する売上利益・営業利益は、安定した利益額を次第に増やすことになる。
 

売上げを拡大して大きな安定した利益を得て競合他社との勝負に勝利しマーケットシェアを高めるこの命題達成の一つのテーマである

 

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5- 5- 6.  既存顧客と新規見込み客の26セグメント

 
 

買う気のあるなしに関わらず、自社にとっての来場客は、既存顧客と新規見込み客に大別されるが、実際は大きく以下にセグメントされている。

 

1.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でSクラスの顧客

2.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でAクラスの顧客

3.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でB上クラスの顧客

4.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でBクラスの顧客

5.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でCクラスの顧客

6.) 招待した既存顧客の内、安定した利益をもたらす固定客でDクラスの顧客

7.) 招待した既存顧客の内、時々単発的に購買行動や購買予定行動を起こす顧客

8.) 招待した既存顧客の内、滅多に購買行動や購買予定行動を起こさない顧客

9.) 招待した既存顧客の内、滅多に購買行動や購買予定行動を起こさない休眠客

 

10.招待しなかった既存顧客で、他リージョンあるいは他テリトリーの理由で招待客リストから外していたお客

11.)招待しなかった既存顧客で、何らかの理由で招待客リストから外していたお客の内休眠客

12.) 招待しなかった既存顧客で、何かの理由で招待客リストから外していたお客の内、顧客リストから外していたお客

 

13.) 招待した新規既存顧客

14.) 招待した新規見込み客

 

15.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内競合他社の既存顧客

16.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、当該市場にかつて存在していたお客

17.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、当該市場に初めて参入するお客

18.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、当該市場の他リージョンあるいは他テリトリーに属するお客

19.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、その他情報収集目的の来場者で、近い将来見込めるポテンシャルが高いと思われるお客

20.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、その他情報収集目的の来場者で将来見込めるだろうお客

21.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、その他情報収集目的の来場者で将来見込めるか不明のお客

22.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、他出展者

23.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、競合他社の回し者のお客

24.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、冷やかし客

25.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、花見客

26.) ブース前を通過しようとした新規見込み客の内、その他来場者

 

☑ 上記、26パターンのタイプ別顧客を分類せずひたすら待機して待った挙句ブースに立寄られたとき極めて短いコンタクト接客時間のなかで生産性の高い適切な対応が直ちに行える

☑ これらの分類において、ブースに立寄った後の対応策を講じている

☑ その対応策立案において、上記に示したように、買う気になってやって来るお客と、やって来て買う気になるお客を種別しているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客の内、会期後の近々に買うであろうお客対策を講じているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客の内、会期後の三か月以内に買うであろうお客対策を講じているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客の内、会期後の半年以内に買うであろうお客対策を講じているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客の内、会期後の 1年以内に買うであろうお客対策を講じているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客の内、会期後の 1年以上先に買うであろうお客対策を講じているか

☑ その対応策立案において、やって来て買う気になるお客と、いずれその内買うであろうお客対策を講じているか

 

開催展示会に出展して、新規見込み客をターゲット顧客にしようとする場合、上記「新規見込み客の源泉は 2パターン」と既存顧客と新規見込み客の26セグメント」および「クラスアップ策のテーマ」と「BtoB企業の取引先(ターゲット顧客・固定客)への向き合い方」で述べたことを整理し、ストーリー化してこそ、出展成果(目的・目標)が出る

 

5- 5- 7.  BtoB企業の取引先ターゲット顧客・固定客への向き合い方

 

BtoB企業の顧客数はBtoCに比べ極端に少ないことは確かである。扱い商品(製品・技術・システム・サービス)市場の規模も、BtoCと同じく、年間の販売量で見たとき、大幅な変動はない。

その市場規模もBtoCと同じく、年間顧客が購入する総額で決まるから、競合他社と勝負しながら、この顧客が支出する総額の争奪を繰り広げ企業は存続し・発展する。

購入価格は多額で客数が少なく、購入に念入りな準備を要し、導入まで長い期間営業活動があって、購入のための予算化にも早くて半年かかり、購入時から導入後に至る過程において、関与部署の担当が複数介入し、そのすべての人の合意が必要であり、一旦取引が開始されれば、販売商品の継続利用が続き、その意味では一般流通で云うところの固定客化されるのもBtoBの特徴である。

そしてBtoCとこれまた同じく、「自社にとって質の高いお客の多い方が勝利する」ことが基本であるが、「固定客は必ず減少する」。

そのため、質の高いお客を増大しつつ、新規見込み客を新規顧客として取り込み、育て固定客化(ボンデング)を図る。そして紹介促進を期待できるように、新規見込み客を新規顧客にデレゲーションを推進してくれたり、現代の言い回し方をすれば、顧客生涯価値の創造顧客ロイヤリティ化など云わば顧客価値を高め応えてもらえる関係づくりすることが、ひいては更なる「売上げを拡大し、安定した大きな利益を得て、競合他社に勝利し、マーケットシェア(市場占有率)を高める」ことにつながる。

だがしかし、いずれこの顧客とも関係性は崩れて離脱するが故に、持続可能な成長を続けるために、既存客のクラスアップと新規顧客づくりは並行して実施しなけれbならない

 

このBtoB企業の顧客へ向き合う活動は、通常のビジネスステージにおける活動でも展開されるものであるが、顧客リストが営業担当者単位に配分され、営業担当体制を限度として限られた日数の範囲で行われている。当然活動テーマは相手先ごとに違う。

 既存顧客の場合は、顧客情報はそれなりにあるから、その情報で次なるテーマは何かは判明している。

 新規見込み客は、ある程度顧客情報を掴んでいて、次なるテーマは何かが見えていてセールスアプローチできるケースと、

 特定エリアまたはリージョン内のどこにどのような見込み客が居るのか、それとも居ないのかサッパリ判らない暗中模索の手探り状態で展開せざるを得ない

 また、新規見込み客の中には、競合他社の顧客もある

 自社商品(製品・技術・システム・サービス)周辺関連市場の顧客もある。

 まったく新しい需要から新規見込み客となった顧客もある。

上記⑴⑵⑶⑷⑸⑹すべてのケースに該当する顧客にたいし、セールスアプローチするとき、通常の場合はこちらから個別にアタックする。

開催展示会には、上記⑴⑵⑶⑷⑸⑹すべてのケースに該当する顧客が向こうからやって来る

 

自発的に行動するからには、それなりの問題点や課題を抱えていて、その解決の糸口を探ろうとか、確かなものを掴もうとか、比較検討してみたいとか、価値あるものに触れてみたいとか、新しい何かを見てみたいとか、相談したいとか、良きパートナーと巡り合いたいとか、活気があって盛況な企業に巡り合いたいとか … 直近で緊急性があって重要性が高く容易に着手できてベネフィット(メリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)が魅力的で直ぐにでもいつでも手に入りポテンシャルのある課題を解決したい」と思って、半日仕事を中断して遠方からやって来て、4時間近く会場を回遊し、熱心に探し回っての顧客と向き合う準備を整えて感謝の気持ちで出迎え来て良かったこの企業と継続取引したい近々是非ゆっくり会いたいと思わせることに徹した特別で記紹介の高い活動を実施してはどうか

 

中には、

 導入をほぼ決定していて最終的に現物を確かめ比較して、関与者の複眼で見聞してふさわしい価値はどこの商品(製品・技術・システム・サービス)であるかを確かめようとするケースもあるだろう

 決め兼ねていて同様の行動を開催展示会で起こすこともあろう

 単に購買予定行動を起こす程度に留める顧客もあるだろう

 あるいは、ニーズは顕在化しては居るが導入には時期早々で一先ずどのような商品(製品・技術・システム・サービス)が存在するのか情報を得る目的の顧客もあるだろう

 ニーズこそあれ導入は先の先と思っている顧客もある

 何かしらの問題を抱えていて、解決する手段手法を模索している顧客も居るだろう

 まったく問題は抱えていなくて改めて見直す必要はないが世の中の変化や時流を確かめて置きたいと思ってやって来る顧客もある

 まったく必要性は無いが世の中の変化や時流を確かめて置きたいと思ってやって来る顧客もある

… まだまだ列挙できるが、概ねこう云った顧客が通常のビジネスステージにも居るし、開催展示会にもやって来ている

 

☑ これら分類から、活動テーマは当然変わってくるが、さて、それぞれの基本的な対応策は既に構築されているだろうか

 

基本的な対応策を打ち出すだけでは商談は進まない。ましてや、名刺を貰ったくらいでアプローチのしようがない。その程度では問題の解決をして差し上げる提案が出来ないことは云うまでもない。

個別の見極めのため、個々の事情の違い状況を先ず把握することからセールスアプローチは開始される。

この基本的な対応策も打ち立てていなければ、収穫は競合他社に持って行かれる覚悟を決めなければならない。だが、それではなぜ手間・時間・コストを投入したのか、仕事は、売上げを拡大し、安定した大きな利益を得て、競合他社に勝利し、マーケットシェア(市場占有率)を高めるためにではないのか、と現場で思うのではなく、事前準備して臨むべきである。

 

開催展示会にやって来る顧客は、少なくとも新しい製品。技術・サービス・利用方法などの提案情報を比較したいと思ってやって来る。

その結果、何らかの結論をそれぞれに応じて出すのであるが、顧客はどのような理由で取引先を決めるのだろうか

☑ あるいは、会期中どのようなことに関心を示したか興味を抱いたことは何であったと思われるか

☑ どのような利用の仕方をすることが有効で効率的で創造的であると理解したのだろうか。

☑ 先述したタイプの組み合わせ別顧客の、想定されるプロフィールと利用のT・P・Oは描き切って臨んでいるか

☑ そこからシーズとニーズが結ばれたベネフィット(メリット・便益・利益・期待どおりの満足・恩恵・利便など)を織り込んだ提案ができるから、その講じた対応策を顧客からヒアリングで得られた情報にフィットさせてこそ相手の購買意欲を着火させるのであるが、顧客を沸点に達する手立ては準備できているか

☑ 着火や沸点の程度を把握したうえで、会期後の商機にブースで得た顧客情報を活かす実施計画はできているか

☑ これらを含めた一連のセールスストーリーはブースに立つ関与者で共有されて臨んでいるか

☑ これらが準備できている出展者だけが大きな収穫を得ていて、準備できているない出展者の働きかけや無為がその成果に反映されているのが展示会の実態である。ビジネスの勝敗を展開する時・場が展示会であって、競合他社に収獲(購入客と販売商品)をプレゼントするために出展したのではないのではないか

 

 

 

 

 

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